「永遠の0」の概要              和佐田高望

 

第1章          亡霊

 祖母松乃の亡くなったあと、祖父大石賢一郎は、孫佐伯慶子、健太郎の姉弟に、実の祖 父は私ではなく「宮部久蔵」であることを告げる。

 深い愛情を注いでくれた賢一郎を、実の祖父と思って育った二人は、何の関心も湧かな かったが、母清子も実の父について知りたいというので、姉弟で調べることとし、もう年から言って数少ない久蔵を知る人を訪ね始める。

 

第2章          臆病者

 初めに訪ねた長谷川梅男は「宮部は海軍航空隊一番の臆病者だった」また「何よりも命を惜しむ男だった」といった。空戦では無傷で帰るが、逃げることがうまかったのだろう。落下傘の手入れは、誰もしないのに宮部は入念にしていた。

 

第3章          真珠湾

 次に訪ねた伊藤寛次は「宮部は勇敢なパイロットでないが、優秀なパイロットだった」と言った。0戦は旋回性能や抜群の航続距離など優秀な反面防御に欠け、操縦者の背面の鉄板や燃料タンク防備も無かった。

 

第4章          ラバウル

 井崎源次郎は、自分の孫も同席させ、慶子、健太郎に0戦の優位性を多くの事例で話し、緒戦から数年は無敵の戦闘機だったと言っていた。米軍は、自動車もろくに作れない3流国「イエローモンキー」と馬鹿にしていた日本のゼロ戦に驚き、「雷雲と0戦はすぐ避けよ」と命じた。井崎は「宮部さんは臆病が過ぎた人だったが、空戦の仕方は抜群に上手かった」「何よりも生き延びることが大切」と言い、日頃の鍛錬を怠らず、よく眠るようにしていた。

 

第5章          ガダルカナル

 井崎はガダルカナルの攻防についても話した。ラバウルから1000キロ、0戦は往復できるがガ島上空には10分余りしかおれない距離、操縦者は7時間も緊張の連続で、戦闘機の性能だけでなく、操縦者のことも考えるべしと宮部さんは思っていた。

 ガ島では、24隻の軍艦、2万人の兵士、839機の飛行機、2362人の熟練搭乗員の損失という大損害を出した。日本軍敗北のはじまりだった。

 宮部さんは「命は一つしかない、大切にして家族を守るよう」相変わらず主張していた。とにかく、「おじいさんは、素晴らしい人だった」と二人に話した。

第6章  ヌード写真

永井清孝は、宮部さんは「一番の夢は生きて家族の元へ帰ること」と相変わらずいっていた。宮部さんは静かな人で何も言わなかったが、碁も強かった。

0戦の質が落ちたことも気づいていた。軍需工場では熟練工が招集され、勤労学徒が生産に当っていたので、質の低下は止むを得なかった。

落下傘で落ちた米兵は既に死んでいたが、胸ポケットに上半身裸体の写真があった。写真の裏に「愛する夫へ」と書かれていた。宮部さんは一緒に葬ってやりたいと、米兵の胸ポケットに戻した。

 

第7章  狂気

 谷川正夫は老人ホームにいた。宮部さんは「勇敢な恐れを知らぬ戦闘機乗り」だった。「操縦技術は抜群で、格闘戦にはめっぽう強かった」「すっぽんみたいな人だった」と言っていた。宮部さんは私に「なぜ特攻を志願した。お前が死んでも戦局は変わらないが、お前が死ねば奥さんが悲しむ」といった。

米軍は搭乗員の命を大切にしていた。落下傘で海に落ちても、潜水艦が救助した。日本軍は熟練した搭乗員が消えていった。

 

第8章  桜花 

岡部昌男は、宮部さんは素晴らしい教官だったという。昭和18年第1回学徒出陣には、大学生10万人を超える学徒兵が生まれ、大学が空っぽになった。10月に明治神宮外苑で出陣学徒壮行会が行われ、冷たい雨の中、5万人の女子学生に見送られ、2万5千人の学徒兵が行進した。彼らは予備学生として即製の操縦者として特攻隊に志願した。特攻で戦死した4400人中半数以上は予備学生だった。

 

第9章  カミカゼアタック

 武田貴則が語るこの項には同感することばかりである。新聞記者高山は、特攻は強制、 洗脳され、愛国者に祭り上げられる。ヒロイズムの殉教者といい、飛行機でビルに突入した911事件の自爆テロと同じだと言う。武田は「無辜の市民のいる無防備のビルを攻撃するテロとは全く違い、特攻はわが方に攻撃してくる空母などを攻撃するもので、自爆テロとは対象も目的も手段も全く違うという。

 その他、新聞社が5・15事件の対応、太平洋戦争を煽り立て惨めな敗戦になったこと、戦後は一転して、誤った思想や風俗に加担して日本を悪くした罪を指摘している。

 また、終戦の日、第六艦隊の宇垣司令長官は17名の部下と共に最後の特攻に出撃し、17名の若き命をむざむざと散らした罪は大きい。責任を感じ一人自害すべきであった。ミッドウエイで敗けた南雲長官、フィリッピンで土民軍の捕虜となり機密書類を米軍にとられた福留中将は何の責任もとっていないなど、武田は指摘した。

 それらの話をとおし、「宮部さんは立派な人、素晴らしい人」であると結んいる。

 

第10章  阿修羅

 景浦介山は戦後やくざになった。訪ねた健太郎に、宮部さんのことを「俺は奴を憎んでいた」と言った。何もかもできる宮部をライバル視したのと、あまりにも考え方の違いのためである。宮部は「景浦は宮本武蔵を気取っているようだが、武蔵は生涯何度も逃げている。それに武蔵は勝てない相手には決して戦わなかった。それこそが剣の極意である」と話した。

 

第11章  最後

 先に会った井崎源太郎の訃報が入った。一緒に話を聞いた孫の誠一は服装態度すっかり変わり同じ青年とは思えなかった。健太郎も少しずつ変わって、また司法試験に挑戦する気になってきた。

 特攻要員と特攻隊員とはたいへんな違い、必死と特攻も大きく違う。必死はまだ生があるが、特攻は十死零生である。

 桜花特攻、神雷特攻隊ともいわれた。もつとも哀れだった。

 

12章  流星

 鹿屋基地から宮部も特攻にいく。自分の飛行機は新型の0戦だった。予備学生出身は一番旧型の0戦だった。無理矢理に代って宮部は旧式に乗った。途中、新型の0戦のエンジンが故障し喜界が島に不時着した。他は全部宮部も特攻で帰らなかった。

 不時着機の中にメモがあった。「この戦争で運よく生き残ったら、お願いがあります。私の家族が路頭に迷い苦しんでいないよう、助けて欲しい」。

 不時着で生き残った大石賢一郎は、戦後4年にわたり松乃を支援し、やがて結婚した。清子は養父の長女として可愛がられた。

 

 

       「永遠の0」の 感 想            和佐田 高望


 感想といっても、どうもまとめ様がなかった。「永遠の
0」とは何を指しているのか。0戦なのか、特攻隊なのか。家族愛を貫いた男の記録、短い生涯を自分の信念に生きた宮部久蔵の生き様だけは良くわかった。

同じ時代に生き、国のため命がけ、命を捧げるのは当たり前と思っていた。そのことが最も家族のためになると信じていた。しかしその点を、久蔵のように表にだしたり、口にしたりはしなかった。口や態度にだせば、女々しいと後ろ指をさされるからだ。

 

あの頃の少年として、私も飛行機乗りにあこがれた。海軍は船もろともで最後の時、少しでも生き抜く自助努力ができないと敬遠した。航空は恰好いいのでかなり希望したが、殉職があまりにも多いので、志望からはずした。途中で死んでは親孝行の半分もできないと思った。久蔵の10年後輩の歳であるが、やはり家族のことはいつも念頭にあった。

 

0戦の性能の良さの反面、防御に弱いのは考えさせられる。人を粗末にする考え方に大きな疑問を持った。死んでしまえば万事終わり、生きていればこそ次々働くことができる。特攻隊を繰り出さねばならぬようなら、どうあがいても、起死回生はできない。ドイツも最後は特攻隊をだしている。人の考えることは洋の東西同じらしい。

 

それにしても、よく調査した本である。日本軍のこと米軍のこと、登場する軍隊、兵器その優劣など正確に書かれている。誇張もなく縮小もなくありのまと思われる。そのような観点で書かれ、宮部久蔵の評価も人ごとに違うのが面白く、その中で久蔵が変わらぬ愛を貫いている。ほとんどの日本兵の口に出さない思いを代弁したのが、この本と言えるように思う。公平公正で客観的立場で書いた底流を感じ、無理な押し付けがないので、読者それぞれが独自の思いがあれば良いと思う。

 

この本を手にするようになったのは、安藤さんのお蔭である。本の題はたまに目にしたが、どうせ世相を揶揄して得意がっている数多の本の一つだろう程度に思い、意識に留めなかった。安藤さんの読書会予定メールを見て古本屋を覗いたがなかった。私の話を漏れ聞いた娘が、どこかの本屋で買ってきてくれた。

 

いつものように読み流して、巻末にあった児玉清と同じような感想だった。これですむところ、安藤さんに報告者をやれと言われ、こりぁたいへんと、再度読み直した。読み直すほどにいろいろわかり、いろいろわからなくなった。映画は見るチャンスを逃した。本を読んだ後の映画は、たいてい気の抜けたサイダーかビールのようだから惜しくはなかった。ただ映画をみれば、山場がわかって良かったかもわからないとも思った。

お蔭で久しぶりに、身を入れて読書した。頭の体操になり感謝している。



『永遠のゼロ』の感想                   川地 元康


6月9日の読書会、急用が出来て、出席することが出来なくなり、申し訳ありませんが欠席させてください『永遠の0』、楽しく読ませてもらいました。 

難しいところもなく、すらすらと読めました。人により評価が全く違い、まるで羅生門の物語みたいでした。これがベストセラーなのがよく分かりました。 

太平洋戦記としても正確に書かれており楽しく読めました。宮部久蔵の生き方、考え方としての物語、軍隊と言う組織の持つ弱点矛盾、これは、私が会社生活で感じた矛盾と共通の部分が有り、よく分かりました。 

戦前の一般的な考え方、例えば人の命を軽視し命は国にささげるものといった思想、熟練の人が宝だと思う思想の欠如、幹部が現場の人の意見を聞かないなど、いろんな問題が描かれ、興味深く読みました。組織で働いた私には身にしみて感じた思いです。上役の人の保身の思い、仕事の出来ではなく上役への忠誠心で昇進や左遷などが決められること、企画開発の人が現場の声を聴かないことなど、そんなことで悩んだことが思い出されました。ただ、上役に逆らって組織の中では生き難く、相当の不利益を覚悟しなければなりません。そのために左遷されたひとを何人か見ました。 

宮部久蔵さんが生き残ることは、軍隊の中では不可能だと思いました。また、空中戦の部分は、剣豪の物語のような面白さでした、宮部さんとかかわった人が、彼の奥さんを助けるところも、人情物語のような良さが有ります。そのほか主人公の姉の恋愛物語なども有り、盛りだくさんの本だと思いました。 

ミッドウエイ海戦は、ほんの少しの作戦の失敗で、大敗しました、運が悪かったのか、神の加護が無かったのか、いずれにしても私が思うには、たとえそこで勝っても、一時的に戦いは長引くかもしれませんが、生産力の差でやがて負けたような気がします。中国との戦争でも手こずっているのに、さらにアメリカと戦争するという政府の考えが、私には理解できません。政府に人命を大切にする考えが有ったら、日本はまた違った道を通った気がします、ただそのころに、人権、自由、平和と言った思想が無かったのが残念です。

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